ジャン・グリヴォJean Grivotエレガントと表現するにふさわしいベルベットのような喉越し始まりは18世紀末にまで遡る、ヴォーヌ・ロマネの由緒正しき造り手です。先代であり現当主の祖父ガストンは初めてディジョン大学で醸造学の学士を修めた人物であったといいます。ガストンの死去にともない、55年にジャンがドメーヌを継承。59年からワインの元詰めを始め、ドメーヌの名声を築きました。現在はジャンの息子エティエンヌ・グリヴォがドメーヌを率いています。エティエンヌがボーヌの醸造学校を卒業し、ドメーヌ入りしたのは82年。夫人はサヴィニー・レ・ボーヌの名門「ドメーヌ・シモン・ビーズ」のパトリックの妹マリエル。若かりし頃、シャンボール・ミュジニィのクリストフ・ルーミエとビーズ家に試飲に出かけ、そこで出会ったマリエルに一目ぼれ。ワイン造りの家系の男とは結婚しないと決めていたマリエルを、何年もかけて口説き落としたといいます。 エティエンヌ・グリヴォの造るワインはじつにヴォーヌ・ロマネらしいスタイル。たおやかで、包容力があり、誠実な印象を受ける、まさにエティエンヌそのものの人物像を写し取ったかのようなワインです。ヴォーヌ・ロマネのクリマはそもそもそのような性格だから当然としても、ニュイ・サン・ジョルジュのレ・プリュリエ、ロンシエール、オー・ブードまでヴォーヌ的なのは驚きです。ヴォーヌに近いオー・ブードはとくにその印象が強く、ニュイ・サン・ジョルジュにありがちな骨太で角張った様子がほとんど感じられません。まさに「エレガント」と表現するにふさわしいベルベットのような喉越しは、このドメーヌのワイン共通の特徴といえるでしょう。 日々研鑽を積み理想のワインを追求今日、ドメーヌ・ジャン・グリヴォは全体で14haほどの畑を所有。本拠地のヴォーヌ・ロマネのほか、ニュイ・サン・ジョルジュにも数々の区画をもち、これはエティエンヌの祖母、マドレーヌが婚資としてもたらしたものです。マドレーヌの旧姓もグリヴォといいますが、両グリヴォ家の間に血縁関係はないといわれています。より良いワインを造り出すためには、過去の技術にもこだわらず、1980年代は熟成能力の高い、凝縮感溢れるスタイルを貫いていましたが、1990年代以降、テロワールを最大限に表現するスタイルへシフト。畑ではリュット・レゾネ方式を採用し、醸造でも、低温マセラシオン期間を短めに、SO2の使用を最小限に抑えるなど、極力人の手を加えない、ブドウ本来の力に任せたワイン造りを行っています。伝統に甘んずることなく、理想のワインを追い求める、非常に好感の持てる造り手です。2010年からは、エティエンヌ氏の娘であるマティルド女史と息子のユベール氏が参画し、エティエンヌ氏の意思を継ぎながら、ファミリー全体でドメーヌを運営しています。 |
ジャン・グリヴォ Jean Grivot
絞り込み