ニコラ・ジョリーNicolas Jolyフランス五大白ワインの1つと評される世界最高峰のシュナン・ブランビオディナミ農法の第一人者であるニコラ・ジョリーが単独所有するクレ・ド・セランは、ロワール河の北岸のサヴニエール地区にシトー派の修道僧によって12世紀に植樹されたロワール屈指の銘醸畑です。以来800年以上もの間ブドウ栽培が行われ、その歴史の中でルイ11世、14世、女帝フィーヌがこの地を訪れたという記録が残っており、かの有名な美食家キュルノンスキーは、この畑から造られるワインを「イケムに並ぶフランス五大白ワインの1つ」と評しました。畑では1980年に部分的に、1984年からは全ての畑にビオディナミ農法を導入。テクノロジーやテクニックに依存し画一化されたワインの氾濫を憂いだニコラは「おいしいワインである前にその土地固有の繊細さを表現した本物のワインでなくてはならない。」というAOC法(原産地呼称統制法)の原点への回帰を提唱。世界中で栽培者への啓蒙や講演活動を行なっています。2002年の収穫からはニコラの娘ヴィルジニーが参画し、ニコラの意思を引継いでいます。 こだわりの徹底したビオディナミ栽培現当主であるニコラ・ジョリーは、1970年にコロンビア大学MBA修了後モントリオールの金融省に1年半、更にモルガンスタンレー(ニューヨーク・ロンドン)に5年間勤務。その後、1976年に銀行家としての生活を捨て、母が運営していたドメーヌに戻りブドウ栽培の見習いを始めました。当初は他の農家と同じように除草剤や化学肥料を使って栽培していたのですが、畑に昆虫がいなくなり、土壌も明らかに変質しているのに気づいた彼は、ルドルフ・シュタイナーが提唱するビオディナミ農法に取り組むことを決めました。この農法を取り入れた当初は、近隣の栽培家より冷やかされたり「息子が帰ってきて、お母さんが可哀想だ」などと非難されていましたが、彼の決意が揺らぐことはありませんでした。そして1983年頃から畑がよみがえり始め、豊かでエレガントなワインが出来るようになりました。現在ではビオディナミ農法の教祖と呼ばれ、マダム・ルロワやマルセル・ダイス、シャプティエなどの偉大な造り手たちも教授を乞う、ビオディナミの中心的人物となっています。 畑は馬で耕し、他にも羊や牛、ロバなどを飼い、これら動物が持っているエネルギーをブドウ造りに取り込む環境づくりを行っています。ニコラはクローン反対派で、クレ・ド・セランにある樹齢80年以上の古樹から接木し植え替える、昔ながらのマサル・セレクションを採用。収穫は全て手摘みで、房ごとの熟度に応じて数回に分けて行う為、その期間が2カ月に及ぶこともあります。醸造はできるだけ介入しないのがモットー。人工酵母を使用せず、発酵時の温度コントロールも行いません。またデブルバージュ、コラージュも同様です。主に古樽で数カ月間熟成後、瓶詰め前にフィルター処理をごく軽く行っています。 ニコラ・ジョリーが語るシュナン・ブランの魅力ニコラ曰く「シュナン・ブランはリースリング同様ブドウが完熟し、貴腐化した状態でその特徴を存分に表現できる数少ない品種のひとつ」。健全でサステイナブルな栽培はブドウの腐敗を防ぐことができ、区画ごとに実が完熟まで進むのを待つことでボトリティスが付着し、果汁が濃縮されることによってミネラル分がより強調されます。遅摘みとは違い、ブドウが深い黄色になってから数日間で貴腐ブドウになり、出来上がったワインは深い黄金色に輝き時に琥珀色になりますが、酸化とは混同しないで頂きたいとのこと。抜栓後の数日間、場合によっては1週間以上もの間ワインは本領を発揮し変化し続けますが、この変化は酸化ではないので、ぜひ数日間かけてお楽しみください。
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