ユニークなラベルが印象的な新進気鋭の生産者

マティアス・クルン氏は食品会社を経て、2012年にズュートブルゲンラント、アイゼンベルクにある最高の区画畑を買収、グロッサーワインをスタートさせました。アイゼンベルクのスレート土壌を生かし、以前のボルドースタイルの濃いワイン造りを止め、エレガントでミネラリーなスタイルに合う様、トノーと大樽を使用した醸造方法に替えるなど、テロワールを理解したワイン造りをしています。樽は全て使用した樽。グロッサーではテロワールを最重視しており、ズュートブルゲンランドの味をそのまま出す為に、それぞれの畑でブドウについた天然酵母で発酵を行います。最初にある程度の量の果汁を天然の酵母で発酵させ、その後樽に加え、発酵をスムースにさせます。現在ビオディナミへの移行中でもあり、畑での仕事も環境に配慮した農法を取り入れています。

ワインの品質はさることながら、ワインラベルのユニークさが際立っています。ラベルに描かれているクラシックな人物たちはかつて畑を所有していた貴族たちだそうです。旧伯爵家のエルデーディー家の畑からもブドウを購入。マリー・エルデーディー侯爵夫人は音楽家のベートーベンに音楽を教えてもらっており、恋人だったのでは、と言われている女性です。

また、グロッサーのワインラベルには「アイゼンベルク」の表記はありません。その理由は1Lのボトルを使用している為です。かつてオーストリアのワインの容量は1Lでしたが、1960年代にボルドー式容量に変わりました。「オーストリアの伝統を守りたい」その一心で1L瓶を復活させましたが、それがDACの規定から外れてしまったのです。「仕方ありません。しかしオーストリアの伝統とワインのためなら、迷わず名よりも実を選びます」と、1L瓶への思いをオーナーのマティアス・クルン氏は記しています。